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無垢の木、土壁、漆喰、和紙。自然由来ものは、からだに心地よいだけでなく、ハイテクな素材に引けを取らないほど、通気性や調湿性に優れています。また、いつか家を壊すことになったとしても自然に還るものばかり。その家に暮らす人だけでなく、その家が立つ環境にもストレスを与えないよう、できるだけ自然素材や地元の杉や檜を使って家をつくることを目指しています。
縄文や弥生の時代に生きた人たちの住まいと、現代を生きる私たちの住まいは、本質的には変わっていません。子どもたちが、木やどろんこに触れて気持ちいいと感じるのにも似ています。土に根ざし、太陽や風とともに呼吸するような家を、私たちは体のどこかで望んでいるはず。最先端の技術や設備に頼るだけではなく、風土にあった変わらないものを大事にした家を、私たちは作っていきたいと思います。

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既製品をできる限り使わず、建具や家具も職人が作ります。シンプルで手に馴染む。肌触りがいい。思わず触っていたい。目に優しい。なぜなら、それらは皆、機械ではなく人が作るから。そこに残る僅かな「手の痕跡」が心地よさを感じさせてくれるのだと思います。古びるのではなく「古美る」ような家を、職人と共にデザインしてまいります。
田舎の古い民家の、土間の台所に置かれた大きな鍋や、年期の入った茶碗、無造作に置かれた手ぬぐいを見ると、何とも言えない味わい深さを感じます。それと同じように、そこに暮らす人たちの息づかいを感じて、暮らしがより美しく感じられるようなデザインがあるはずです。日々の暮らしが美しくなればこそ、住むほどに愛着が湧き、長く住み継がれていくのです。

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家は、一軒の建物だけで成り立つものではありません。周囲の環境によって、暮らし方も住まい方も、そして見え方も変わるもの。だから、公園の緑も、裏山の木々も、流れ込む風も、柔らかな太陽の光も、できるだけ暮らしのなかに引き込みたい。それは、部屋の温度差を減らしたり、家のなかの通気を良くしたりという機能的な意味だけでなく、住み心地や愛着に関わるものだからです。
階段を登るとき、お料理を作っているとき、子どもと一緒に昼寝しているときや、部屋のお掃除をしているとき。ふと、小窓から色づく木々が見えたり、天窓から雲の流れるさまが見えたり、葉のこすれあう音と共に風が吹き込んできたり。そうして、日々のほんのふとした瞬間に風景が感じられる。周囲の環境とシームレスに繋がるような家が、私たちの理想です。

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家をつくることは、そこに住む人の暮らしをつくること。家を建てるだけではなく、建てた家で何を大切にして暮らしたいのかまで一緒に考えながら、家づくりを進めたいと考えています。畑がやりたい。料理が好き。趣味や時間を大事にしたい。家族とゆったりと過ごしたい。そこから見える風景を楽しみたい。そこに暮らす人の思いにあわせて、家の作りも素材もかたちも変わってきます。
皆さんの希望やリクエストを伺いながら。土地の性格、ご予算などの条件などを考慮しながら。現実と理想のちょうどいい「あいだ」を探りながら。お互いの考えや意見をざっくばらんに話し合い、ともにつくる家を心がけています。どんな暮らしがしたいですか? 何が好きで、どんな音楽を聴いて、何を食べて。そんなたわいもないことを伺うところから、家づくりを始めさせてください。